2008年11月09日

仕事色々


仕事なんて、なんでもひょんなことからはじまる。

漫画の原作の仕事は、出版社から前にちょこっと書いた物を漫画化していいかと聞かれた。
いいですよ、といったついでに、原作やらせてもらえませんか、といったらそのままやることになった。

ラジオも最初は出演しろと言われた。
僕はしゃべるのは得意ではないので、シナリオだけ書いて友達にしゃべらせた。
そしたらそこから話が来た。

写真もそうだ。
なーんにも知らないで、適当に撮った写真を出版社の人に見せたら、おもしろいのでつかってみよう、となった。
そこから、どこかへいくついでに「〜を撮ってきてくれないか」といわれるようになった。

まー、人生一体何がきっかけで、どんな仕事がはじまるかわかったもんじゃない。
これをやりたい! と思っているものはナカナカうまくいかないのに、そうじゃないものはあっさりと決まってしまう。
とはいっても、たぶん、僕は相当恵まれている方だと思うけど。

そうそう、ちょっと変わった仕事といえば、電子書籍の仕事もそうだった。
三年ほど前に、ある実業家が電子書籍をつくる事業をはじめるということで電話があり、「石井君、君がプロデュースをやらないか」と言われた。
やってみようとしたら、ある特定のテーマでしかできないことが判明した。しかし、僕はそのテーマではやるにしても限界があると思った。それで、人に紹介された別の会社に第一段としてやるはずだった企画を持ち込んだ。
そしたら、それが採用されて、なんだかんだ今に至るまで昔の友達とやっている。
僕(正確にいえば、僕が企画していろいろやっているグループ)も今月1冊、来月4冊、そして一月に3冊だす予定で編集作業をすすめている最中だ。さらに、そこから漫画化、紙書籍化の話もある。先日ここに書いた女性誌のインタビューなんかもそこからきた話だ。
気がついたら、とんでもないことになっていた、みたいな感じがしないでもない(笑)。

ところで、電子書籍というのは、紙書籍と似ているようで、まったく違うメディアでそれはそれで面白い。
文体などが違うのはもちろんなのだが、読者が求めるものがまったく違うのである。テーマがちょっと特殊なのだ。
電子本で売れるものがかならず次の要素が入ってくる。

「紙書籍では買いにくい内容であること」

具体的にいってしまえば、エロなどがほとんどなのだ。
電子書籍の市場は倍々で大きくなっているけど、紙書籍を電子書籍で読んでいるわけじゃない。
読者は「普通の本なら紙書籍で買う。紙書籍で手に取りにくいものを電子書籍で読む」と考えているのである。
現在の電子書籍というのは、携帯で読む「ケータイ書籍」がほぼすべての市場なので、その特性が凝縮されているのである。
結果、電子書籍の分野ではエロ関係が圧倒的につよくなる。
だからエロでエッジのきいているテーマなら売れるが、そうでなければいくら良くても売れないということになるのだ。

これまで恋愛ネタも色々とやってみたが、本当にそうだ。
「恋人」とか「元カレ」とかいうテーマより、「セックス」というテーマの方が全然売れる。圧倒的に売れるのだ。
つまり、一般的な恋のノウハウよりも、セックスというストレートなテーマの方がいいということだ。
(反対に紙書籍の場合は、もっとソフトな路線、つまり手に取りやすい「恋人」とか「元カレ」といったテーマの方が売れる)

出版業界では、良く次のような議論がある。

「ケータイ書籍に、紙書籍の読者はとられているのか?」

書く側からすれば、答えは「NO」だと思う。少なくとも今のところは。
ケータイ読者が求めるものと、紙書籍の読者が求めるものはまったく違う。「とられている」ということはあまりないといえるだろう。

ただし、僕は紙書籍が電子化することは大歓迎だ。なぜって、著作権の問題である。
図書館で無料で貸し出されちゃ、本なんてまったく売れない。人に貸し借りされちゃ、作者には一銭も入ってこない。だから書き手はどんどん少なくなり、面白い作品自体も減っていく。

しかし、電子化すれば、それがなくなるかもしれない。
いまのケータイ書籍がそうだ。有料ダウンロードでしか読めないし、それを第三者に無料で送信したり、コピーしたりすることはできないようにデータ処理されている。だからすべて実売で利益が入ってくる。
活字の著作権なんて、そうやらない限り守れるわけがない。(あくまでも書く側の理想論だけど)

紙書籍はいつかは電子化していくことは間違いない。
時代の流れも、利益率も、著作権の問題も、あらゆる面から考えても、そうなった方がいいし、そうなるはずだし、そうするべきだ。
最大手のパピレス社はIPOを狙っているだろうし、電子本もひとつ売れる機器がでれば一気に広がる。
いつどうなるかなんて、株と同じで誰もわからないけど、いつか何かが起きる。その時どうなるかはとても楽しみだ。
(だから、両方やってみているんだけど)

ただ、その時に、「紙書籍のテーマが電子化されて主流となる」のか、「電子書籍のテーマが主流になって紙書籍のテーマが衰退していく」のかというのは、大きな問題だと思う。
メディアという見方からすれば、「出版社がだす電子書籍というそれ単体でのメディアが成り立つ」のか、「ケータイのポータルサイトの1コンテンツとして電子書籍が組み込まれる」のかという問題もある。
前者なら出版社はそれ単体の企業として生き抜けるだろうけど、後者ならIT企業の子会社的存在、あるいは現在でいう編プロ的存在になりかねない。

また、書く側にも変化はあるはずだ。
一番顕著なのは、作品が短編化することだろう。
小説だって、ノンフィクションだって、ことごとく短くなると思う。
そうなれば、昔の短編傑作が主に電子化されるだろうし、短編作家がもてはやされるのだろう。
いまはどれだけ短編がかけても最後は長編がかけなければダメという雰囲気があるが、それが逆になるに違いない。
(文体はそもそも時代によって変わるものなので、電子書籍だろうと、紙書籍だろうと30年たてば全然ちがうものになるはずだ)

まぁ、最終的にどうなるかなんて誰もわからないし、なったらなったらで最初はいろんなチャンスと弊害があるんだろうけど、それでも何かが変わっていくのはいいものだ。
その時に昔ながらの利権にしがみついて「ブーブー」文句を垂れるような老人にだけはなりたくないものだ。老人はやはり謙虚な方がいい。

kotaism at 12:11│Comments(0)clip!日々のこと 

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