『発達障害と少年非行 司法面接の実際』という本がなかなか面白い。
その世界ではかなり有名な方なのだが、その人が書いた論文集が本書である。
テーマは、表題の通り、少年が発達障害を抱えた時、それがどのようにして犯罪に結びつくかということだ。

TVニュースや新聞のコメントなんかを見ていると、有識者はすぐに事件を時代と結びつける。
「この事件は現代の若者がゲームやネットによって生命の尊さを忘れている証拠」だとかいう。まったくバカバカしい。
偉そうなことをいう人は、なんだって時代と結びつける。時代と結び付けて結論をだせばすぐれた意見だと思いこんでいる。
しかし、時代ほど大きな概念はないだろう。「時代」なんて言えば、何だって当てはまるし、何だってもっともらしくなってしまうのだ。だが、実際はそんな広い概念をひっぱりだして当てはめたところで何の意味もなさない。
飛ぶ鳥を指さして、「あれは、鳥だから飛んでいるのだ」と言っているようなものだ。本来考えなければならないのは、その鳥がどのような種類で、どのような身体構造をもって、なぜ飛ぶのかを考え、説明することではないか。

僕は、事件についてもまったく同じだと思うのだ。
ひとつの事件が起きた時、「時代」のような大きな概念をもちだしてきて容易な結論をだすのはナンセンスだと思っている。
もしその事件について考えたいならば、個人を徹底的に分析して、その個人の中に何があり、それがどうなり、どのようなことにつながったのかを考えることだ。できるかぎり「個」につきつめていったところにしか、事件の真相はないと思う。

そういう意味では、この本はとても参考になる。
事件をミクロ的につきつめて考えていく。犯人の心の内面まで踏み込んで原因を見つけていく。
特に、発達障害という最近注目されている病理がどのように犯罪に結びついているかということを様々なケースから考えている。
僕がもっとも「なるほどー」と思ったのは、発達障害が「間接的」に事件に結びついているケースだ。
子供が障害をもっているがゆえに、そのまわりの生活環境がどんどん悪くなっていき、結果としてその環境が子供を犯罪に追いやるというパターンである。
たしかに、そういうことってあまり気づかれないけど、かなりあるだろうな、と思う。

ともあれ、この本は論文集だけど、実例がたくさん載っているので、とても読みやすい。
犯罪に興味のある人なら誰でも読めると思う。是非、一読を。

発達障害と少年非行―司法面接の実際
発達障害と少年非行―司法面接の実際
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