時々、世界の路上生活者や物乞いについての参考文献はないのですかと尋ねられる。
正直に言えば、ほとんどない。驚くぐらいにない。まぁ、だから僕がそこに目をつけたということもあるんだけど。

ただ、あえて一点挙げれば、面白い体験談が書かれた本がある。
「乞食の子」である。ハードカバー版は表紙があまりにひどかったが、文庫になってすっきりした。
内容は、台湾の物乞いの子として生まれた人が、その半生を書いたものだ。後半部分の立身出世物語はありふれているが、前半部分の物乞いの体験談は圧巻である。

僕が一番リアリティを感じたのは、「精神薄弱者の母親」と「暴力的な盲目の父親」の関係だ。
盲目である父親が、精神薄弱者の母親を勝手に妻にして、ボンボン子供を産ませて、DVを行う。
正直、物乞いを取材をしていると、実にこういうケースが多い。「身体障害者の男」と「精神薄弱者の妻」という関係がありふれているぐらいあるのだ。どこの国でもそうだった。
障害者だって性欲はあるわけで、しかし障害のある物乞いがつかまえられるのなんて精神薄弱者の女性ぐらいしかいない。良くも悪くもそれが路上の現実であり、それがそうしたカップルが多くなる原因になっているのだろう。
ま、お互いが幸せだと思えれば、それでいいんだけど。

乞食といえば、以前ちらっと日本のホームレスについて何かやろうと思ったことがある。
が、なんとなくやる気がなくなって、来年の初めからHIVについて一本取材を開始することになった。
今年の初めにK社のIさんから連絡をもらって以来、毎回朝までお酒を飲んで何かやろうと話し合ってきた。それがうまい具合に実現することになったのだ。
さて、企画はどうするか。
先日、Iさんと深夜まで高田馬場ジャズバーでウダウダと話し合い、帰りのタクシーの中でふと思いついたのがHIVだった。ただ、HIVはHIVでも、切り口は従来のものとはまったく違うものになる。
来年からできる限りHIV患者へのインタビューをしたいと思っている。もし何かつながりのある方がいらしたらぜひご連絡下さい。企画の詳細など改めてご説明したうえで取材のご協力などをお願いしたいと思いますので。


乞食の子〔文庫版〕 (小学館文庫)
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