パレスチナでとんでもないことになっている。
戦車部隊がつっこんで、市街戦にまで発展しているという。まったくどうなってしまうのか。

しかし、「空爆」と「市街戦」とでは、闘う側の心理も天と地ほども違う。
「空爆」であれば罪悪感をほとんどともなわずに人殺しができるが、「市街戦」であればそうではない。兵士はすさまじい心理的プレッシャーを負いながら人殺しをしなければならない。

『戦争における「人殺し」の心理学』 (ちくま学芸文庫)という本をご存じだろうか。
僕はこれはものすごい本だと思っている。タイトルだけみると「うわっ、グロそう」と思うかもしれない。が、中身はそうではない。

この本の作者は膨大な兵士へのインタビューから「殺人を避けたいと思う人間心理」を兵士の中から読み取って、それを実際の戦争のデータに当てはめて検証していく。
たとえば本来は数発の十で人を一人殺せるのに、兵士の中に「殺人を避けたい」という心理がはたらくことによって、これが何十倍にもなって100発撃っても一人も殺せないなんていう状況も生まれるらしい。実際に、戦争でつかわれた弾丸と戦死者数を比べると、それが裏付けられるそうだ。

本書を読むと、人間はもともと人間を殺すことのできない生き物だということがわかる。
戦争映画や、一部の戦争報道、あるいは歴史の記録だけ見れば、人は戦争によってたやすく人を殺せるように錯覚しがちだ。実際に戦争を知らない人たちはそういうふうに描きたがるのだろう。
ところが、人間はそんな単純なものではない。
戦争では、たしかに人が人を殺す。しかし、人の中には人殺しをしたくないという心理がある。戦争というのは、その葛藤の連続なのである。

戦争に希望があるとしたら、この「葛藤」だけなのかな、と思う。
たぶん、いまパレスチナにいる兵士たちも、敵と面と向かった時、この葛藤にさいなまれているのだろう。こういうご時世だからこそ、今一度この「葛藤」について考えてほしいと思う。


追記
「迷子の警察音楽隊」というとてもいい映画がある。
エジプトのアラブ人警察官が、イスラエルの見知らぬ街に迷い込んでしまう。そこで、イスラエル人たちの温かさに触れる。
ただ、それだけの映画なんだけど、「国家と国家」と「人と人」とがまったく違うものであることを痛感する。よろしければ、こちらもDVDでご覧あれ。


戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)
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迷子の警察音楽隊 [DVD]迷子の警察音楽隊 [DVD]
出演:サッソン・ガーベイ
販売元:Nikkatsu =dvd=
発売日:2008-06-13
おすすめ度:4.0
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