先日、ずいぶん久しぶりに、中学生時代の友人&先生と会った。十八年ぶりぐらいだろうか。
いろいろと当時の話をしていたのだが、一番盛り上がったのが、「中学時代にいたちょっと変わった同級生」についてだった。
僕が中学生の頃、つまりちょうど昭和から平成になる頃は、まだまだ精神疾患の種類が少なかった。たとえば、今ではうつ病だとかそういう言葉がさかんに飛び回っているが、当時はそれがなく、「なんか暗い人」だったのである。
むろん、うつ病以外でも様々だ。
たとえば、A君という男の子がいた。いまから考えれば、A君は性同一性障害だった。しかし、当時はその病名がひろまっていなかったために、<女っぽいヘンな奴>と見なされていじめられてしまい、A君は登校拒否をしてしまっていた。あるいは、Bさんは知的レベルがかなり低い子で「ばい菌」扱いされていた。だが、彼女は普通学級にいて、体育館の裏で誰かまわずセックスしていた。
当時、中学生だった僕たちの脳裏には、その存在がやたらと奇妙に、そして鮮明に残っており、昨晩も「あれは今考えれば性同一性障害だったよね」とか「あの子は知的障害だから、学校で所かまわずにSEXしちゃっていたんだ」とかいう話になったのである。

実際、何の病気にしても、発生率は高い。
たとえば、ADHDはアメリカだと5%。
統合失調症やアスペルガー症候群は1%。
記憶の一部が飛んでしまう解離性とん走の場合、0.2%。
多重人格は3.1%。
小児自閉症は、0.1%。
性同一性障害は、0.05%。
である。

※性同一性障害はもっと多いだろうと思う方もいるかもしれない。しかし、「女装趣味」と「性同一性障害」は違う。むろん、「ゲイ」と「性同一性障害」も違う。結構そこらへんを混乱している人がいる。

このような病気はもっとたくさんあるわけで、それを合計してみれば、おそらく数パーセントないしは10パーセント以上になるはずである。
たとえば、10パーセントあったとしても、1クラス(30人)いれば、3人ぐらいは何らかの疾患を抱えていることになるのである。

こういうことでいえば、前に面白い話していた医者がいた。
HIVの取材をしていた時に、たまたま「HIV患者に自殺は多いか」とか「自暴自棄になるHIV患者が多いか」というような話になった。その時、その医者がこう言ったのである。

「今は、わかっているだけでHIV患者は15000人以上いるわけです。そう考えてみると、統合失調症だけでも、最低150人ぐらいいるわけですよね。ただ、統合失調症ゆえに乱交や風俗に出入りして感染された方も多いので、実際には普通の確率より高いと思われます。もし3倍だったとしたら500人近い人がそうなわけです。とすると、この約500人の統合失調症のHIV患者が、統合失調症によって強迫観念に陥って、自殺をしてしまったり、人にHIVをうつそうと考えたりすることがあるんです。これは、統合失調症の発生率から考えれば、当たり前のことなんですよ」

なるほど、と思った。
15000人もいれば、いろんな病気をもっている人がいるはずなのだ。
それを考えると、HIVになったから自殺をしよう、とか、逆恨みして人にうつそう、というのではなく、HIVに加えて別の精神疾患をもっていて、そちらの疾患のためにうつそうとしてしまう、というケースが多いということになるのだ。精神疾患ゆえに、そういうことをするようになる人がいることが考えられるのだ。

これは「同性愛」なんかも同じである。同性愛体験者は、10人に1人ぐらいいるといわれている(6人に1人というデータもある)。
それを受けて、薬害エイズの原告団の人が次のように言っていた。

「薬害エイズの被害者の中には、『オレは非加熱製剤で感染したんだ』といっているけど、1000人以上薬害エイズの被害者がいれば、そのうち何十人かは同性愛者、あるいは同性愛経験があるはずだ。としたら、そういう人たちは非加熱製剤ではなく、同性愛でHIV感染しているかもしれない。だけど、国から賠償金をもらったりしているからいまさらそれはカムアウトできんだろうなー」

こちらも、なるほど、である。
可能性ということを考えていけば、数十人ぐらいの集団であれば、いろんなことが引っかかってくるのである。

これは、戦争なんかも同じである。
太平洋戦争がはじまって日本は徴兵で次々と兵士を戦場へ送り込んでいった。
検査の段階で、重度の障害者は取り除くものの、60年前だからそれだけではわからないことも多々あった。たとえば、統合失調症なんかは最近ようやくその概念がひろがったわけで、60年前には概念すらなかったから、よほど重症の人でなければ徴兵を免れることはなかった。
そのため、軍隊にはこのような精神疾患を抱える人も少なくなく、こういう人たちが問題を起こしていたことがあるのだ。

たとえば、かるい統合失調症の人が、戦場の極限状態へいかされることで、病気がひどくなり、強迫観念の中で中国人を虐殺をしたり、味方の日本兵を殺したりしてしまうケースがあったのである。
ある兵士の証言に「兵士の中には、戦闘中に気が狂って仲間を射殺したり、地元の人間に拷問をくわえて楽しんだりする狂人がいた」というものがあったが、あれなどは精神疾患の兵士の病気ゆえの行動なのかもしれない。

(『日本帝国陸軍と精神障害兵士』という本を読むと、第二次世界大戦において、日本兵の21パーセント、米兵の63パーセント以上が精神神経症になっている。いわゆるPTSDになったケースである。こうなると、ほかの病気も合わせると、兵士の半分ぐらいがなんらかの精神疾患をもっていることになるわけで、それによって虐殺や見方を殺すような人の数が増える可能性もあるだろう)

また、性同一性障害だったらどうなるか? 当然、前線で戦えるわけがないのである。
そこで脱走をして銃殺刑になったり、軍隊内で同性愛事件を起こしてしまったりするのである。きっと、そういう例は無数にあっただろう。

これはテロリストなんかにしても同様だ。
たとえばアルカイダが数千人いれば精神疾患の人なんて数十人から数百人いることになる。
また、イスラーム社会における精神疾患の人が、病気ゆえに一般の共同体で暮らしていくことができずに、アルカイダに加入するということもあるだろう。そうなると、アルカイダにおける精神疾患患者の率はさらに高くなるはずだ。
(実際、日本における犯罪者だって、病気ゆえに日本の社会に溶け込めずに、暴力団組織にはいって犯罪を起こしたりする人がいる。それと同じ流れで、アルカイダに入ってしまう人もいるだろうということである)
であれば、このような人たちが病気の妄想によって残虐行為を行うことは、普通に考えられるのである。
そもそも、多くの日本人はイスラームの人たちは残虐だと短絡的に考えるけど、イスラームの人たちは日本人と同じぐらい穏やかだし、あんな凶暴なテロリストのことを受け入れている人はいない。つまり、イスラーム社会の中でも、テロリストは明らかにヘンな人たちなのだ(そもそも普通の精神をもっていたら人の首を切ったりできるわけがない)。そういう意味では、精神疾患をかかえているテロリストが残酷な行為をしている、とか、精神疾患の人たちがテロリスト集団をつくっている、という見方もできるのである。

もちろん、なんでもかんでも、病気に結びつける気は毛頭ない。

しかし、ここまで病気の種類が明らかになり、その感染率の高さがとかれると、ある一定の集団の中にそれがまじっていることは明らかだし、病気の人たちがある集団をつくることだって十分に考えられることなのだ。
だから、彼らに罪がないとか、許せ、というつもりはないけど、何かを考えるヒントにはなるだろうと思う。


日本帝国陸軍と精神障害兵士
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