このたび、『感染宣告』が講談社より文庫になりました。

本作は、2010年9月に雑誌「g2」の創刊号に100枚ほどのルポとして掲載され、同年11月に大幅に加筆して<講談社創業100周年記念書き下ろし作品>として刊行したものです。

この本の思い出は、とにかくHIV感染者や関係者に話を聞かせてもらうことが大変だったことです。
最初は闘病ブログを作っている方々に連絡してインタビューをお願いし、その後は病院やSNSやNPO経由で少しずつ広げていきました。私の読者から直接連絡をいただいたこともあります。
東北から中国までまわり、地域によって受け止め方がまったく違うことも知りました。

みなさんは、HIVのことをご存知でしょうか。
HIVの方はどのように感染をつげられ、受け止め、悩み、恋人や夫婦の関係を維持し、子供をつくろうとしているかを知っていますか?

私は大勢の関係者に話を聞かせていただきながら、彼らの体験は人間が再生していく物語ではないかと思いました。。
人間が絶望の底から再生して生を歩んでいく極限のドラマのように感じたのです。そして、私はこのテーマを描くためにはそのような視点から描かなければならないと考えました。
それは性と生の業から逃れられない、すべての人間に通底する大きなテーマを含んでいます。

本の医療的な内容については、2名のHIVでは高名な医師に監修していただいています。
ご興味のある方は、ぜひ手に取っていただければ幸いです。


感染宣告 エイズウィルスに人生を変えられた人々の物語 (講談社文庫 い 130-1)
感染宣告 エイズウィルスに人生を変えられた人々の物語 (講談社文庫 い 130-1) [文庫]



【内容紹介】
感染を告げられたとき、妻は? 家族は? 恋人は?
HIVという幻に翻弄される人々の絶望と希望──

エイズが「死の病」ではなくなった現在も、日本人HIV感染者の多くは人生を大きく狂わされ絶望のなかを生きている。恋愛、結婚、出産、家族関係……、決して語られることのない生と性の現実とは!? 世界の奈落を追った気鋭の作家が百名以上の感染者と家族に取材を敢行し世に問う、衝撃と感動のノンフィクション。

「エイズは男女にとって一番大切なところに忍び込み、彼らを極限の状態にまで追いつめます。弱さや醜さや高慢さといった負の内面をむき出しにし、人間性を試してくるのです。(中略)こんな底意地の悪い病気はありません。試された人間がボロボロになっていくのを眺めているのですから」(エイズ患者の妻)──本文より