そろそろ夏が終わる。

夏というのは、あまりの暑さで頭があまり働かない。
文章を書くにはあまり適した季節ではないのだ。特に重い作品には適さない。文章に体重がのっからないのである(ボクサーのパンチみたいだな)。

ともあれ、この夏は、正直細かい仕事がつづいた。
突発的に文庫の刊行が決まったり、Q&A形式の新書をまとめたり、2年前に書いたエッセーをまとめたり。

ただ、これももうすぐ一段落。

11月からは、一転して、超ヘビー級の作品に取り組んでいくつもりです。

11月はまず、先月「小説新潮」での連載が終わった『蛍の森』の刊行。
これは僕が学生時代からずっと取り組んできたテーマであり、去年の夏から全身全霊を込めて書いた小説です。
四国遍路の森にあった、ハンセン病患者たちの隠れ里の話。
この2年間は、この作品を出すために費やしてきたと言っても過言ではないですね。
何より読んで頂きたい作品です。

年明けは、ヘビーな作品の文庫化があります。

『飢餓浄土』→河出文庫、1月
『遺体』→新潮文庫、2月

です。
思えば、『飢餓浄土』は3.11が発売日で、くしくもその日から取り組むことになったのが『遺体』でした。
3.11の翌週からは『飢餓浄土』関連の刊行イベントがたくさんつまっていたのですが、それをすべて捨てて東北へ行った時のことが思い返されます。
この二つはすでに出来上がっている作品なので、おそらく『蛍の森』のゲラを終えてから細かな作業に取り掛かることになるでしょう。
問題は『遺体』の文庫版に、いま電子書籍で発売している続編『「遺体」それからの物語』を入れるかどうかですが、これについては熟考します。また決めていません。

文庫が終わり、春〜夏は取材・執筆に4年を要したドキュメンタリーの刊行です。
今年の春まで「新潮45」に連載していた『浮浪児1945』です。
これは、太平洋戦争のあと、家族を失った孤児(浮浪児)たちが、上野の地下道に住み着いた時のドキュメントです。
彼らは闇市やパンパンやヤクザとともに戦後の時代を生き抜きました。その生き残りの人たちを訪ね、当時を活写した作品で、僕にとっては初めての「歴史ドキュメンタリー」です。
『蛍の森』と同じく、十年以上前からやってみたいと思っていたテーマです。

とりあえず、11月から半年ほどの間、全力で『蛍の森』(新潮社)、『浮浪児1945』(新潮社)に取り組んでいきますので、どうぞお楽しみに。