今年も一年が終わりますね。

思えば、今年は尼崎の角田美代子事件のルポルタージュを『週刊ポスト』に一挙掲載してから一年がはじまりました。
ちょうど大晦日から正月にかけて執筆していたのですが、同誌の担当編集者K氏が年を越す23時半〜0時半の間にひたすら事件資料を送り続けてくれていたことを思い出します。毎回ながら本当にK氏のやる気には頭がさがります。

その後、東日本大震災のずっと書けなかったことを『津波の墓標』と出して発表。ほとんど同時に『遺体』の続編『「遺体」それからの物語」を電子書籍にて発表。
その後は、<新たなことへの挑戦>を目標だと公言していたことから、『遺体』の映画化、僕が原作を手掛けた漫画『葬送』の出版、あるいは連載漫画『コールドケース』の開始、児童書『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか』、そして長年の構想を結実させたミステリ小説『蛍の森』などを手がけました。

新しいジャンルでの仕事は体験したことのない刺激ばかりでしたね。
すでにブログ<『蛍の森』創作秘話>で書きましたが、新潮社の優秀な編集者Tさん、Kさんとのやりとり。
僕はTさんを「文学の鬼」と称しているのですが、そのとおり作者以上に鬼気迫る感じで作品に取り組む姿勢は圧巻でした。
詳しくはこちらを。

児童書では、ものすごく重要な視点を学びました。
ポプラ社の新書創刊に深〜く携わらせていただいて出版社の内部事情をいろんな形で学ばせてもらった後、『ズッコケ三人組』『かいけつゾロリ』シリーズをつくった伝説の児童書編集者だった坂井前社長、そして担当編集者のMさんから徹底的に<児童書の目線>というものを教えていただきました。
僕が書いていたノンフィクションの目線が大人の目線だとしたら、子供の目線はしゃがみこんでさらに頭を下げて横を向かなければならないようなものです。
はじめはそれが理解を超えた視点でしたが、何度も話し合う中で少しずつそうした視点があることを教えられ、学び、それを身に着けることができました(やはり伝説の児童文学編集者は違いました。本当にすごかった!)。
本の見本が出来上がった時、坂井前社長が目を潤ませて「本当に子供に読ませたい本ができた。ありがとう」と言ってくれたことが、僕にとっての何にも代えがたい体験でした。

映画制作からも多くのことを学びました。
監督の君塚さんからは何度も飲みや観劇に誘っていただき、端々で大切な言葉や姿勢を教わりました。
主演の西田さんからも同様です。
え? それは何だって? 秘密です。それぐらい、僕にとっては大きな言葉でした。
ただ僕にとっては映画は上映がうまくいったということ以上に、釜石の関係者が喜んでくれたことが一番でした。フランスに暮らすフランス語の翻訳者の方々とも交流が始まり、毎月のようにフランスから誰かが訪れているようです。
先日のクリスマス前にフランスの翻訳者や出版社の方々が釜石のみなさんと飲み会をしたとか。僕は中米滞在のせいで参加できませんでしたが、連絡をいただいて本当にうれしかったです。

そうそう、一つ大切な企画が途中でオジャンになったこともありました。
1年以上全力で取り組んでいたテーマだったのですが、ある事情でやむを得ず撤退することに。
あれは悔しかった。死ぬほど悔しかった。そして関係者に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。陰で悔し涙を何度も流しましたが、その思いは別のテーマにぶつけることにします。

その他細かなこともいろいろと印象に残っています。
たまたま西田さんに紹介してもらった女優の熊谷真実さんがうちの父親と交流があることを知って父親と一緒に会いにいったり、ポプラ新書の創刊で鎌田實さんにかわいがってもらっていろんなことをご一緒させていただいたり、対談では水木しげる氏はじめ様々な知識人のほかに関東連合の幹部、青森のイタコ、山口組の元大幹部など普段では会えないような方々と親しくさせてもらったり、アイドルやアナウンサーからネオヒルズ族まで変わった交流が生まれたり、小学校で授業を担当して感動したり、首長族のふるさと、伊豆大島、中南米などいろんなところを飛び回ったり、宗教者数百人の前で講演してお坊さんに間違えられたり……
外から見ると楽しそうに見えるかもしれませんが、やっている本人としては、悔しいこと、挫折感に満ちたことだらけです。99%が悔しいことですね。それでも、一生懸命にやっていれば、それらもまた楽しい思い出になるものなので、連日のように四苦八苦して息を切らしながらも前向きに取り組んでいこうと思います。

さて、来年は何をするんだっけ。

2014年は、1月、2月に文庫(『飢餓浄土』『遺体』)の出版からはじまり、今年連載していた『絶対貧困と相対貧困』を新書にてだし、そして4年にわたって取材執筆を行ってきた『浮浪児1945』(タイトルは変更予定です)を7月に出版。夏以降も小学館の漫画雑誌で連載している作品の単行本化などいろんなものを予定しています。
また、某雑誌にて世界各地の出産現場をルポする新連載をスタート(僕にとっては久々の本格海外ルポ連載です)、あるいは小説の第二弾、第三弾をスタートさせていく予定です。
もちろん、それ以外でも児童書等また新しいことにチャレンジしていきます。年明け早々また伊豆大島や福島にも行かなければなりませんしね。

ともあれ、毎日必死になって仕事に取り組んでいけるのは、本当にみなさんの応援のおかげだと思っています。
僕が取り組んでいることの大半は楽しくスカッとするようなものではなく、むしろ重苦しくトラウマになるようなことばかりです。
それでも、僕はそれを形に残すことが大切だと信じているから無我夢中でやっているのです。それからかならず何かを変えるきっかけになると思っているからです。
2014年もそうした信念は変わりません。もう自分の限界をとうの昔にはるかに超していますが、それでもみなさんに大切なものをひとつでも多く届けたいという気持ちで、最後の一滴まで血と汗を流して全力で取り組んでいきたいと思います。
本年は本当にありがとうございました。
そして新たな年もどうぞよろしくお願いいたします。